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九州大学大学院農学研究院 植物育種学研究室

研究室ホームページ

植物育種学研究室(旧農学科農学第一講座、通称育種学研究室)は1920年の開講以来一貫して、イネを対象として、遺伝・育種学的研究を展開しています。社会的にも生物学的にも期待の大きいイネを実験材料にして、当研究室では伝統的課題に新しい視点を与えながら研究を進めています。

リンク 教育 研究 メンバー アクセス 研究業績 連絡先

教育

担当授業科目(学部)

九州大学・農学部・生物資源生産科学コース・農学分野・植物育種学研究室

植物育種学総論

植物育種学の基礎となる遺伝資源,遺伝変異,生殖生理,選抜理論について概説し,交雑育種法,雑種強勢育種法,突然変異育種法などの各種育種法について解説する.

植物育種学各論

植物育種学総論に引き続いて,倍数性育種,染色体工学,植物組織培養,遺伝子操作,遺伝子組換え植物,植物ゲノム解析における分子マーカーの利用,量的形質の遺伝解析,育種目標と種苗管理等について解説する.ほかに,遺伝学・農学実験などを分担で担当している

担当授業科目(大学院)

九州大学大学院 ・ 生物資源環境科学府・資源生物科学専攻・農業生物資源学コース・ 植物育種学分野

植物遺伝育種学特論農業生物資源学プロジェクト演習植物育種学演習農業生物資源学特別研究第一農業生物資源学特別研究第二農業生物資源学特別実験ティーチング演習国際演示技法インターンシッププロジェクト演習農業生物資源学特別講究農業生物資源学特別演習

研究

世界の3大穀物の1つであるイネは,わが国にとってはもちろんのこと,他の穀物と比較して発展途上国における生産・消費が大きいことから,世界の食糧問題を考えるうえでも最も重要な作物です.またイネは,ゲノムサイズが小さいこと,形質転換系が確立していること,さらには遺伝・育種学的知見が整っていることなどから,バイオテクノロジーを用いた新しい育種ならびに植物ゲノム研究の対象植物としても注目されています.

1. イネの遺伝子マッピングとクローニング

染色体上に存在する遺伝子の配列を決定することを連鎖分析と呼び,当研究室では,これまでにイネの基本数に相当する12の連鎖群,あるいは標識遺伝子群を明かにしてきた.近年,分子生物学の進歩に伴い,DNAを制限酵素で消化した場合に得られる品種あるいは個体間のDNA多型すなわちRFLP(DNA制限酵素断片長多型)を連鎖分析に利用することが可能となり,RFLP連鎖地図の作成,従来の連鎖地図とRFLP連鎖地図の一体化等に取り組んできた.また,種子でマッピング集団を維持できるため,材料の調達,情報の蓄積等に便利であるRecombinant Inbred(RI)linesを用いて,375個のRFLPマーカーからなるRFLP連鎖地図を作成した.これらの研究で培われた技術は,研究項目(5)の実験系統群の作出で用いたDNAマーカー選抜において有効であった.

遺伝子マッピングの発展として,連鎖地図上の遺伝子位置情報を手がかりとして遺伝子の単離を行うマップベースクローニングを行っている.大黒型矮性(d1)に関してはイネゲノム計画と共同で遺伝子単離に成功した.現在は主として研究項目(5)から供給される研究材料をもとに,研究項目(2)で遺伝学的解析がなされたいくつかの遺伝子を対象に,遺伝子クローニングを行っている.

2. イネの各種形質の遺伝・育種学的研究

栽培化関連形質(脱粒性,有芒性,粒大等),生殖的隔離関連形質(雑種不稔,雑種崩壊),環境適応性(出穂性),耐虫性(ツマグロヨコバイおよびセジロウンカ抵抗性等)に関わる形質遺伝学的研究および育種学的研究を行っている.手法としては研究項目(5)において,DNAマーカー選抜によって作出される材料を基礎に,評価方法の開発,遺伝子資源の探索,遺伝子マッピング等を行なっている.

DNAマーカーの利用における遺伝解析手法として,QTL分析がある.当研究室では,研究項目(5)で作出されたRI linesおよび染色体断片置換(導入)系統群を利用して,成就した形質に関するQTL分析を進めている.

3. 栽培イネの進化・分化に関する研究

熱帯アジアに分布する2倍性の野生イネは多くの変異を集積して数多くの系統に分化し,これらを人間が収穫する過程において最初の栽培イネが起源したものと思われる.当研究室では世界各地から集めた栽培イネの分化に関する研究を行っている. この分野では,従来の交雑親和性あるいは生理・形態形質の特性から類縁関係を推察する方法に加えて,連鎖地図の作成に用いたRFLPクローンを利用してイネ属の類縁関係を探る目的で,栽培種と近縁野生種のRFLP分析を行っている.この結果,イネ属Aゲノム種の類縁関係をかなり明確に示すことができた.

ポストゲノム研究として,この研究項目は大きな課題となると予想されるので,これからは研究項目(1)と(2)で得られた成果をもとに研究を進展させたい.

4. イネ属の細胞遺伝学的研究

これまでイネの染色体はコムギやオオムギに比べて小さく,細胞壁が堅牢なため観察しにくいとされてきた.当研究室では酵素解離法によってこれまで困難とされてきたイネ体細胞染色体の標本化および核型分析に成功し,この方法によって,作出した各種異数体系統,染色体構造変異系統の染色体解析を行っている.最近では,高性能光学顕微鏡と染色体解析システムが一体となった画像解析装置を用いてイネ体細胞染色体の核型分析に取り組むとともに,染色体 in situ hybridization やヒト染色体などで行われている顕微染色体切断技術を駆使して,染色体解析に取り組んできた.

また,野生種の染色体を1本だけ栽培種に導入した系統(野生種一染色体添加系統)を育成して野生種の特性を解析する一方,野生種の持つ有用遺伝子の栽培種への導入の可能性を探っている.

5. イネ実験系統群の作出と利用

当研究室の最もユニークな研究課題であり,なおかつ上記研究項目を実施する上において強力な武器となる実験材料の供給源となっている.歴代の教官と学生の協力において確立された大規模交配能力とDNAマーカー選抜システムをフルに活用して,現在は,日本型とインド型の間のRI Linesの作成と染色体部分置換系統群の作出,さらにはイネ属異種Aゲノム種からの染色体断片導入シリーズ(Introgression Lines)の作出を進めている.具体的には,アフリカ栽培イネO glaberrimaの持つ有用かつ特異的な形質を分析するために,O glaberrimaとO glaberrimaの戻し交雑世代からglaberrima染色体断片をできるだけもらさず残すようにDNAマーカー選抜を行うことによって,glaberrima染色体断片導入系統群の作出に成功した.この方法によってAゲノム野生種であるO. glumaepatula,O. meridionalis,O. rufipogon,O. nivara等においても染色体断片導入系統群の作出が行われ,これらの系統から検出されたナチュラルヴァリエーションは研究項目(1)と(2)の研究対象となっている.

さらには,当研究室の遺産である標識遺伝子系統,染色体構造変異系統,各種異数体系統,突然変異系統を2000系統以上を維持・保存している.これらは遺伝子クローニングを行う際に必要な突然変異系統や遺伝子マッピングを行う際の実験材料として有効かつ貴重であるので,系統維持・保存に努める一方,さらに充実させるために交配や放射線処理を通じて新たな実験材料の作出に努めている.

研究室の一年

行事
4月 入学式,オリエンテーション
5月 は種準備
6月 は種,育苗管理
7月 田植え,早苗振り
8月 圃場調査など
9月 交配,秋期育種学会
10月 収穫,新歓ソフトボール大会
11月 収穫
12月 忘年会
1月 新年会
2月 卒論発表,修論発表
3月 卒業式,春季育種学会